株式会社の設立手続きは、合同会社と比べて
「定款の認証が必要」で「費用が高い」のが大きな特徴です。その分
「資本的基盤がある」「事業発展意欲がある」とみなされ、社会的信用が高いと判断されるのが一般的です。
それぞれの特徴を挙げてみました。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款の認証 | 必要(約3〜5万円) | 不要(0円) |
| 登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
| 役員の任期 | 最長10年(定款で定める必要あり。更新要。) | 無期限(更新不要) |
| 意思決定 | 出資比率に応じる | 原則として出資者全員の同意 |
また、行政書士や司法書士への報酬も、合同会社設立の場合と比べ、1~2割高くなる場合が多いです。
株式会社設立の手順
株式会社の設立は、大きく分けて次の4つの手順ですすめます。
「基本事項の決定」
「定款の作成・認証」
「資本金の払い込み」
「登記申請」
手続きの完了までには、一般的に2〜4週間ほどかかります。「急いては事をし損じる」ですので、余裕をもってプランを立てることが肝心です。
会社の基本事項を定める
まずは会社の骨組みを決め、必要なものを揃えます。 次の内容を事前に決めておきます。アドバイス(注意点)もお伝えしておきます。
(1)社名(商号)
やりたいことを列記することをお勧めします。複数作っておけば、将来、定款変更をせずに済みます。但し、何でもかんでも思い付きで書くと「何だか節操のない会社だな?強みか何か分からないし、胡散臭いなぁ。」と不審に思われる可能性があるので、関連性のある業務にとどめておくべきでしょう。
(2)本店所在地
あらかじめ本店の目途を付けておく必要があります。ただし、自分がやりたいビジネスを進める上で、本当に最適な場所かどうかを「多面的・長期的視点」で再確認する必要があります。
自宅開業でOKと言っても、手続き上はそれでも出来ますが、お子さんやペットがいる、玄関が一つの建物という物理的環境で、個人情報を扱う法人は、自宅を本店所在地として対外的に信用が得られるか?法人として、本腰を入れてビジネスに取り組めるのか?という問題があります。もっとも、ネット販売やネットサービスメインで、顧客の出入がほとんどない場合は、情報管理さえ徹底すればOKという場合もあります。
さらに、インターネットや商業登記簿謄本で自宅の場所がさらされるというリスクがあります。万一その会社に不祥事が起こったり、またはフェイクニュースで間違った情報が流布された場合、SNSですぐに住所が知れ渡り、嫌がらせに遭うケースも多々あります。個人情報保護の観点からも、自宅を本店住所にすることは、慎重に検討すべきでしょう。
また、住宅ローンを組む場合、「併用住宅」の扱いとなり、全額下りない場合がありますので、要注意です。
さらに、区分所有マンションや賃貸アパートでは、大家さんの許可を得なければ法人登記不可というところが数多くあります。不特定多数のお客様に、自分の賃貸物件に出入りしてほしくない、という思惑があるからですね。もちろん、バレない場合もありますが、通常は、郵便物を受け取るために、ポストに何らかの表示(シールを含む)をする必要があります。たまたまネットで検索したら、自分のアパートがヒットしたという場合もあります。万一大家さんに伝わったら、契約違反はもちろんのこと、「この借主はコソコソ悪いことやるんじゃないか?」という疑心暗鬼を生み、長期的な信用問題となります。ビジネスは信用第一ですし、まして身近な関係者の信頼を落とすようなことはすべきではありません。
バーチャルオフィスでの開業も、設立は手軽ですが要注意です。例えば、東京都港区青山エリアには、やたらと企業が集中入居しているビルがあります。もっとも、「いいところで会社やってるね!」と羨望のまなざしで見られることも在るかもしれませんが、結果は「自己顕示欲を満たすだけ」という場合があります。実体がないので、会社としての信用が得られにくいです。特に、銀行口座の開設や一部の許認可(建設業、古物商、派遣業など)が下りにくいか、宅建業のように、そもそも事務所要件を満たさない場合があります。真面目な顧客から「胡散臭い」と思われる可能性が高いので、そのあたりも総合的に見て判断すべきです。
なお、定款においては、本店所在地は●●市、とか ◎◎郡〇〇町 までの記載でOKです。
(3)資本金額
1円からでも設立は可能です。しかし、対外的な信用が得られにくいデメリットがあります。商業登記簿謄本はだれでも閲覧できますし、取引相手が、資本金10円の会社だとしたら、積極的に取引したいと思うでしょうか?「100万円」ならどうか?というギリギリの考え方もありますが、10円よりは印象が良いしても、現実的に初期投資ですぐに運転資金が0円になる可能性が高いです。正直なところ、資本金は多ければそれに越したことは無いという事です。何より、資本金は、その会社の財産的信用の証ですからね。
無難な線で行くならば、旧制度の有限会社の設立基準が300万円だったため、現在でも「300万円あれば、ある程度の事業実態と準備がある」という、旧来のイメージに基づく最低限の信頼感は得られやすいかもしれません。実務的にも、開業資金と手元運転資金で、それくらいの金額は必要と思われます。
一方で、許認可によって「最低資本金」の制度があります。例えば「建設業(一般)」は自己資本500万円以上、「一般労働者派遣事業」は資産2,000万円以上といった基準があるため、これらに該当する場合は300万円では事業を始められません。許認可を進める過程で、いくら以上の資本金が必要かというところを、しっかり把握しておく必要があります。
(4)役員構成
監査役などを置かず、取締役会も行わない1人取締役(兼代表取締役)の会社であれば、意思決定が極めて速く、登記手続きも定款作成もシンプルとなります。また、複数人で共同経営する場合は、きちんと会社法に則った手続きを行う必要があります。複数の取締役による経営が「1+1=3」といった相乗効果を生めば大変よいのですが、先々意見の相違で喧嘩別れしたり、裏切りに遭うリスクもゼロではないので、対外的な格好付けで役員を増やすのではなく、本当に信頼できる人を取締役に入れるべきでしょう。役員が沢山いればよいというものではなく「どのような結果を望むか」という観点から、役員構成を吟味すべきですね。
(5)決算期
決算期(事業年度の終わり)は、法律で決まっているわけではなく、会社が自由に決めることができます。
一般的には「3月」とする会社が多いですが、ただ単純に「学期末だしなぁ」「春だしなぁ」なんていう単純な考え方で選ぶべきではありません。新設法人の場合は「消費税の免税期間」「業務の忙しさ」「資金繰り」の3つの観点から慎重に選ぶことをお勧めします。
1. 消費税の免税期間を最大化する
資本金1,000万円未満で設立する場合、原則として設立から最大2期(約24ヶ月分)は消費税の納税義務が免除されます。
- 注意点: 免税期間は「2年間」ではなく「2期」です。もし1期目を数ヶ月で終わらせてしまうと、その分だけ免税期間が短くなってしまいます。
- 対策: 設立月の「前月」を決算月に設定すると、第1期目を最長の12ヶ月に設定でき、節税メリットを最大化できます(例:5月設立なら4月決算)消費税という観点からも、決算期を吟味すべきですね。
2. 本業の「繁忙期」と「決算作業」を重ねない
決算日を過ぎると、2ヶ月以内に「決算書の作成」「法人税の申告・納付」を行う必要があります。
- 注意点: 本業が忙しい時期(繁忙期)と決算業務が重なると、事務負担が過大になりミスが起きやすくなります。また、繁忙期は利益の予測が立てづらく、適切な節税対策(期末の経費購入など)を打つ余裕がありません。
- 対策: 繁忙期から数ヶ月ずらした、業務が落ち着いている月を決算期に設定すれば、余裕をもって決算対策が出来ます。
3. 納税タイミングの資金繰りを考慮する
税金の納付期限は、決算日から2ヶ月後です。
- 注意点: 大きな支出(ボーナス支給、店舗の更新料、仕入れのピークなど)が重なる時期に納税期限が来ると、キャッシュフローが苦しくなるリスクがあります。
- 対策: 入金が安定している時期や、手元の現金が潤沢な時期の2ヶ月後に納付が来るように調整します。
4. その他のポイント
- 税理士の繁忙期を避ける: 3月や12月は多くの会社が重なるため、税理士が非常に多忙です。あえて別の月にすることで、より手厚いサポートや相談を受けやすくなる場合があります。
- 棚卸資産(在庫)が少ない時期にする: 小売りや製造業の場合、決算月には実地棚卸が必要です。在庫が最も少なくなる時期を決算期にすると、作業負担が軽減され、決算書も綺麗になります。
定款の作成と公証役場での認証
定款とは「会社の基本事項とルール」をまとめた書類で、株式会社の場合は公証役場での認証が必須です。(合同会社の場合は、定款は作成しますが、公証役場の認証は不要です。但し、商業登記の申請手続きは、株式会社と同様に必要です。)
(1)定款の作成(案文作成~公証人の確認~完成)
決定した基本事項をもとに定款を作成します。行政書士がある程度のひな形を持っていますので、基本事項をそれに埋め込んで、全体の体裁を整えたうえで、定款の案文(ドラフト)を依頼者に確認して頂きます。
その後、行政書士が公証役場の公証人と直接メールで案文の確認作業を行い、指摘事項を訂正の上、定款を仕上げていきます。完成した定款は、依頼者に最終確認して頂き、案文作成は完了となります。同時に、行政書士が、定款の認証を受ける日を公証役場と取決めします。
(2)公証役場での認証
本店所在地と同じ都道府県内の公証役場で認証を受けます。(当事務所では)電子定款で法人設立を行うため、Web(主にZoom)を利用して、公証人との間で本人確認と意思確認を行い、認証を受けた定款をダウンロードして完了となります。当事務所の行政書士(可児)が依頼者の代理人として対応するので、依頼者は公証役場との連絡も、公証人とのやり取りもする必要がありません。
認証に必要な費用は、 公証人手数料(3万〜5万円)と印紙代(4万円)ですが、電子定款なら印紙代は不要です。
また、認証時に、暴力団排除の観点から「実質的支配者」の申告も併せて行います。
3. 資本金(出資金)の払い込み
定款の認証後(当日または数日以内)、資本金を銀行口座に振り込みます。この時点ではまだ会社の口座がないため、発起人の個人名義の口座を使用します。 発起人(または代表者)の口座に各出資者が振り込みします。
◎振込履歴がわかる通帳のコピー」または「WEB明細の印刷物」を用意します。
◎代表者が「払込証明書」を作成し、上記コピーと合綴して製本(または電子データ(PDF)化)します。
4. 法務局への設立登記申請
管轄の法務局に書類を提出し、登記を申請します。この申請日が「会社の設立日」となります。
なお、法務局は平日しか空いていないため、例えば「誕生日の〇月〇日にしたい」とか「大安の〇月〇日にしたい」と希望をしてもそれが土日祝日だった場合は、そもそも法務局が開いていないことから、その希望通りにならないことがあります。必ず「平日」の開庁日にあわせて、法人設立日を決定します。
- 申請方法: 窓口持参、郵送、またはオンライン(法務省:一人会社の完全オンライン申請など)で行います。
- 登録免許税: 資本金額の0.7%(最低15万円)の納付が必要です。
- 登記完了: 申請から約1〜2週間で登記が完了し、登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書が取得できるようになります。
上記の他、司法書士に登記申請を依頼する場合は、別途「司法書士報酬」が必要となります。(7~9万円(税込)が相場です。)
行政書士の業務報酬・設立費用の合計について
行政書士報酬は、資本金の額や業務内容にもよりますが、交通費、資料取得費一式込みで
66,000円~99,000円(税込)で対応いたします。この中に、今後経営を発展させていくうえでのでのコンサルティング的なアドバイス業務も含まれております。中小企業診断士や税理士、社会保険労務士、弁護士など専門職のご紹介も無料でできますので、ワンストップ窓口として対応いたします。
公証役場の認証費用、登録免許税、商業登記の司法書士報酬を含めたトータルコストについては、資本金の額や取締役の人数によっても異なります。個別にお見積もりを算出しますので、設立をご検討の際は、事前にご相談下さい。
補助金申請や助成金申請(ハローワーク・保険・年金関連を除く)のお手伝いもしておりますので、遠慮なくお申し付けください(報酬は別途となります。)
